バスケットボール部の顧問として

                 門真市立第五中学校 英語科教諭 溝上佳孝

 私は大阪の門真市立第五中学校に勤務しています。私は4年前に弱視となり、現在の視力は0.02で、メガネやコンタクトレンズで視力矯正をすることもできません。本やプリントを読むには拡大読書器やルーペを用いており、生徒の顔もよく見えないので、体格や声の特徴で誰なのかを判断しています。

私は教師歴2年目です。新任であった昨年は上手く授業もできず、校務分掌も十分にこなせず、自信を失っていました。視覚障害のために教師の資質が欠落しているのかと思い悩むこともありました。

 私は男子バスケット部を指導していますが、昨年度は副顧問という立場で、あまりバスケ部の子ども達とは関わっていませんでした。しかし、今年度、主顧問の先生が転勤することになり、私がメインで男子バスケ部の顧問を務めることになりました。
昨年度きっちりとバスケ部員と人間関係を築いていなかったため、4,5月のころはこちらの指導が入らなかったこともありました。実際に私が指示した練習メニューに「何でそんなんせなあかんねん。しんどいからいやや。」と反抗されたこともありました。
そこで、まず私は、私自身がバスケットボールをもっと勉強すると同時に、子ども達との信頼関係を築く必要性を実感しました。

 私はバスケットボールの本やビデオを買い、分からないところは転勤された昨年の顧問の先生や女子バスケ部の先生、また大学時代の友人に尋ねました。
他校との練習試合や合同練習を積極的に組み、新しい戦術や練習メニューを学んでいきました。
もちろん、私には選手の動きが見えないので、副顧問の先生や選手にコートの中の様子を聞き、そこから状況判断を行い、指示を出すようにしました。

 また、子ども達との信頼関係を築くために、子ども達とできるだけ対話をするように努め、毎日いっしょに1.5kmのランニングもしていきました。休憩中や練習後には子ども達といっしょにシュート練習も行いました。
私自身が中学時代バスケ部に所属していたのですが、ゴールのリングが見えないためにあまりうまくシュートを打つことはできません。しかしながら、子ども達と話をし、いっしょに汗をかいているうちに次第に信頼関係が芽生えていきました。
そうして部員は私の指示に従うようになり、練習に熱心に打ち込んでいきました。

 春の門真大会では苦戦もしましたが、門真五中の歴史では初の優勝を勝ち取ることができました。初優勝を果たした感激は強く、それまでの苦労が報われた気がしました。
試合後に“五中、ファイト、ファイト、オー”というかけ声を部員全員で円陣を組んで出し合うのですが、そのときにある選手から「先生も入って」と誘われ、私は選手と一体感を味わいながら、バスケ部顧問としてみんなに認められたのだと実感することができました。

 初優勝をきっかけに、バスケ部員の練習への取り組み姿勢はますます向上していきました。新しいことを吸収しようと、失敗を恐れずに積極的にプレーをしていくようになりました。
練習試合や公式戦を行うたびに、選手の技術も心もどんどん成長していくのが見えました。

 夏の門真大会では決勝戦で同点、延長戦にまでもつれこんだ末に惜しくも敗退し、準優勝に終わりました。私は部員とともに悔し涙を流し、自分自身がバスケ部に引き込まれていくのを感じました。
その悔しさをバネに、お盆休みも返上して練習を行ってきました。3年生にとっては引退試合となる8月末の北河内大会では強豪校を倒し、ベスト8に進出することができました。
結果的に敗退したものの、選手一人ひとりが全力を振り絞って最高の試合をしました。
試合後のミーティングでは「精一杯のプレーをしたので悔いはない。」「辛いときも苦しいときもあったけど、3年間バスケを続けてきて良かった。」というコメントにくわえて、「ここまで僕たちがやってこれたのは先生方のおかげです。ありがとうございました。」という言葉もかけられました。

 バスケ部の顧問は私も含め、バスケットボールに関しては未熟者ばかりで十分な技術指導ができないこともありましたが、子ども達と一生懸命関わろうとしてきたという熱意が伝わっていたのだと実感し、感動のあまり涙が溢れました。

 私はバスケ部の顧問としての経験を通じて、熱意をもって誠実に対応することは子ども達の心に届くものだと思えるようになりました。視覚障害のために、また知識・技術不足のために務まらないと思っていたことも、工夫次第で乗り越えられると思います。その工夫とは、やはり子ども達とのコミュニケーションをどのようにとっていくのかということであり、誠意をもって接することだと思います。そして、その点に関しては視覚障害は決してハンディとはならないでしょう。

 私はバスケ部の顧問として得たこのような教師としての姿勢を今後、授業やクラス経営に活かしていくつもりです。

■2003年4月〜8月の戦績■

・ 門真大会(春):優勝

・ 大阪府大会:4回戦

・ 門真大会(夏):準優勝

・ 北河内大会:ベスト8

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