教師として自信を持てた瞬間(6)
楠敏雄

 私の場合ですが、定時制だと英語が苦手な生徒が圧倒的に多いのです。boyとかbookとかの単純な単語でさえきちんと書ける生徒は半分いないという状況でした。

 英語を教えることも大事だがそれ以前に彼らに自信を持たせるといいますか、人間としての信頼関係をどうつくるかがやはり大事だと痛感しました。

 2カ月近く、一人ひとりの名前と声と特徴を頭に叩き込むことに私は非常に力を入れました。2クラスですのでだいたい80人の生徒の名前を家へ帰ってきてからカセットで何回も聞きなおして覚えるのです。

 やはり、名前と、どの辺に座っているかが重要です。今日はどうもサボっているようだなとか、居眠りをしているみたいだなとか、そういうのを把握して、その彼に当てていろいろ話しかけるのです。教科書を持ってきていないようだったら隣の子に「ちょっと教科書を一緒に見せてくれ」と言って読ませるとかです。そういう一人ひとりの付き合いを大事にして覚えることに重点をおいたのです。

 3年目が終わったときに、学校から定時制削減の話が出ているので辞めてもらうかもしれないという話が出ました。クラスの生徒たちがそのうわさを聞きつけたようで、楠先生に辞めて欲しくないと署名を集め始めたのです。「署名をやるから」と言ってくれて、「この先生は残ってほしい」ということを言ってくれました。そういう声で私は自分がやっていてよかったという自信がついたのです。その感触を得たということです。


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