韓国の視覚障害教師の現状――日韓親善交流大会から――
障碍者職業総合センター 指田忠司

 全国視覚障害教師の会(JVT)では、昨年12月27日から30日までの日程で韓国に代表団を派遣し、韓国視覚障害教師の会(KBTU)との初の親善交流大会を実施した。

 交流大会には、日本側からJVT会員12人を含む17人が、韓国側からはKBTUの会員20人が参加し、予想以上の盛り上がりをみせた。

 本稿では、両国の団体の活動と今回の親善交流大会の概要を紹介するとともに、両国に共通する課題について述べてみたい。

JVTの活動と交流会の企画

 JVTは、1981年5月に関西地方の普通学校に勤務する視覚障害教師を中心に結成された団体で、現在、小中高と大学、視覚特別支援学校の普通科などで働く視覚障害教師100人以上が加盟している。毎年8月に研修総会、5月と12月に拡大役員会を実施し、全国各地から会員が集まり、教育実践の向上と教育環境の改善を目指して活動している。

 JVTでは、これまでに視覚障害教師の実践記録3冊を発行するなど、視覚障害教師の可能性に関する啓発活動にも力を入れている。現在の代表は、都立葛飾盲学校の重田雅俊教諭(全盲、社会科)である。

 JVTの活動は、どちらかといえば地味な方で、研修会では日頃の授業での取り組みを中心とした議論が多い。そうした研修会に筆者はほぼ毎回参加し、視覚障害者の職場環境や、障害者権利条約などの動向に関する講演を行ってきた。そうした講演の後に、海外の視覚障害教師の状況はどうなっているのか、という質問を受けることがたびたびあった。そこでその都度、イギリス、イタリア、アメリカなどの状況について答えてきたが、欧米の視覚障害教師の団体との交流を企画するまでには至らなかった。

 今回の韓国訪問の発端は、2011年1月22日(土)に、東京ヘレン・ケラー協会と国際視覚障害者援護協会、それに韓国のカンナム障害者福祉館が共催で、日本点字図書館で開催した「日韓友好『音楽とシンポジウム』の集い」にある。

 このイベントに参加したJVTの重田代表が、パネルディスカッションの中でソウル盲学校の英語教師キム・インヒ氏(晴眼者)に対して、JVT会員の韓国訪問の可能性を尋ねたところ、「歓迎します」との返事を得たことから、韓国訪問研修のアイデアが浮かんだという。

 しかし交流大会の計画が具体化したのは昨年8月以降で、8月末に会員の1人が韓国を訪問。次いで9月下旬に筆者が韓国視覚障害教師の会(KBTU)の関係者と面会して、日本側から託された実施計画を提案した。その後は、大韓按摩師協会の呉泰敏(オ・テミン)氏の仲介で連絡調整を行い、計画が一気に具体化したのであった。

親善交流大会の概要

 交流大会は、12月28日(土)の午後、国立中央図書館障害者図書館の会議室を会場に開かれた。

 この図書館は一昨年8月に開館したもので、視覚障害者だけでなく、聴覚障害者や肢体不自由者など障害者一般に対するサービスを行う拠点として位置づけられている。館長のキム・ヨンイル氏は、全盲の学者で、前職は韓国の光州(クァンジュ)広域市にあるチョソン(朝鮮)大学(注)の教育学の教授である。

 開会式と参加者の自己紹介の後、全体会と分科会が開かれ、両国の視覚障害教師の状況と、それぞれが直面する課題が報告された。全体会では、KBTU会長パク・チュンボン氏(弱視男性)と、JVT事務局長の馬場洋子氏(神戸市盲教諭、英語科)がそれぞれの会の活動について紹介した。

 パク氏によれば、KBTUは2009年に結成され、現在120人の会員がおり、うち60人が普通学校や特別支援学校で働いているという。

 KBTUの主な活動は、1つは定期大会や夏の合宿、毎月の行事などの親睦活動、2つ目は働きやすい職場環境や支援制度の充実を求める活動である。活動の中心はソウル市内で、日常の連絡などはインターネットを使っている者が多いという。職場環境の整備などについては、国会議員事務所の協力を得て、障害のある教師の全国調査が行われ、その数字をもとに、障害種別を超えて環境整備に向けた陳情活動を行っているが、視覚障害者固有の問題もあることから、視覚障害教師の会の独自性を維持しながら活動を広げていきたいと語っていた。

 次に、韓国側から2件、日本側から1件の発表があった。初めは、知的障害の特別支援学校の教師、キム・ホンヨップ氏(全盲男性)が、「視覚障害教員の現状と勤務環境」について、障害者義務雇用制度、教員採用試験の障害者枠、障害者の受験生への配慮、補助教員配置の法制化、視覚障害教員の実態調査、文書処理の電算化などについて、現状を紹介。障害者義務雇用制度で教員の採用は増えているが、採用後の支援が追いついていないことが報告された。

 2番目の発表は、普通中学校の英語教師、キム・ギョンミン氏(全盲女性)が、「私の学校生活について」というテーマで発表した。生徒とアイコンタクトがとれない状況、思うように視覚的な指導ができない悩み、補助教員と比較される辛さ、援助・共感・対話などの指導上の難しさについて率直に語った。また、教科以外の校務分掌を担当させてもらえない肩身の狭さや担任を受け持ちたいという強い意欲についても述べていた。

 これに対して、日本からは、栃木県宇都宮市の小学校で音楽教師として働く南沢創氏(全盲男性)が「支え合い共にあゆむ教師生活」と題して発表した。同氏はまず、リコーダーで「アリラン」を演奏した後、教師生活11年の経験を通して感じた教師として働く上で必要な姿勢について発表した。現在勤務する学校では、校長に後押しされて、毎月全校の児童、保護者、教職員に向けた通信を発行して、自分の考えや働く様子を知ってもらったり、全校の教員と協力しながら、道徳や特別活動の授業を展開したりという積極的な取り組みについて報告した。

 最後に、3つの分科会に別れて、日韓両国の状況について話し合った。第1分科会は学習内容や授業作り、第2分科会は教師の会の活動や支援制度、第3分科会は補助教員との関係や職場の人間関係について、というテーマであった。筆者は第2分科会に参加したが、雇用率制度を軸に障害のある教師の採用が進められていること、その一方で、十分な支援体制が整備されていないことなど、日韓に共通する課題が横たわっていることが痛感された。

おわりに

 今回は初めて日韓両国の視覚障害教師が一堂に会して経験と意見交換を行ったわけであるが、それぞれの歴史や環境が違うものの、抱える問題には共通性があり、とても興味深く充実した取り組みになったと思われる。今回開かれた交流の扉をさらに広げ、日本と韓国の視覚障害教師の会のさらなる発展を目指して、これからも交流が継続するよう関係者の努力に期待したい。

 KBTUはまだ結成4年という若い団体である。会員も若く、大半が20代と思われる。韓国では、2007年の差別禁止法施行後に障害者雇用が一挙に進み、教師以外にもソウル市内の図書館などでも視覚障害職員が採用されたり、新たな変化が起こっているようだ。日本でも障害者差別解消法が制定され、障害者権利条約が批准されたことから、今後の変化が注目されるところである。

(注)1946年に72,000人にも及ぶ設立者によって開学した韓国でも有数の私立総合大学。東京都小平市にある「チョソン(朝鮮)大学校」との関連性は全くない。


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