韓国視覚障害教師の現状と勤務環境
韓国視覚障害教師の会会員 キム・ホンヨップ

 2004年の政府の(女性、地方大学、障害者の公職採用拡大法案)において示された障害者に適した職種の発掘、身体の障害を理由とした進出のバリアの除去などの大きな課題に対する具体的な施策の実施により、2006年から教員に対しても、義務雇用制度が適用されるようになった。

 なお、2008年からは、新規の教員採用試験に障害者枠の募集制度を導入した。また、2007年における関連の法律の改定に伴い、2009年の新規の教員採用試験から、障害者の採用定員を5%以上としていたものを、6%以上に拡大適用し、採用した。

 これに伴い、障害教員の数は、障害者の公務員の数に比例して引き続き増加している。2008年と2010年の全国の障害教員の数は、それぞれ2128人と2154人であり、採用率は、それぞれ0.66%と0.78%である。このことを見ると、全体の障害教員の数及び、採用率が緩やかに増加してはいるものの、引き続き義務雇用率3%に比べて低い。

 しかし、こうした資料だけでは、毎年全体の教員の中に障害教員の数或いは、性別、年齢、障害の種類及び、程度などの障害教員に関連した具体的な情報を把握するには、十分ではない。即ち、彼らがどのような障害を持っており、どこに勤めていて、学校現場でどんな大変さがあるのかを把握するのには困難な状況である。

 このように、障害教員に対する具体的な現状の把握が困難な理由は、現在の障害教員に対する政策が、障害教員を現実に支援するためというよりは、障害教員の採用率増加に焦点が合わせられているためであると判断される。

 具体的な障害教員の現状の把握が困難な中で、現在全国の17個の市・道の学校現場に勤務している視覚障害教員の現状の資料もやはり十分ではない。ただ、2008年の中央行政機関に配属されている視覚障害公務員の数は、379人であり(行政案全部、2010)、2009年の全国17個の市道教育委員会に配属されている視覚障害教員を含めた視覚障害公務員の数は、591人であった。(雇用労働部、2009)、

 全国12校の視覚特別支援学校で勤務する教員の中で、視覚障害者であると確認されている人の数は、約90人余りである。

 しかし、これだけでは、視覚障害教員がどの校種に何人程度勤務しているのか、視覚障害の分類や程度はどんなものなのかについて把握するには限界がある。

 2012年現在、「韓国視覚障害教師の会」の調査によると、中東部の視覚障害をもつ教員の17.4%は、普通学校で普通の生徒を対象に教科を教えているとされている。このことから、従来の、視覚障害をもつ教師を特別支援学校に配属する傾向の枠組みが薄れ、教職への進出の方向が多様化されてきたことが分る。

 しかし、こういった視覚障害教員の教職への進出の拡大にもかかわらず、視覚障害関連の政策の照準は、未だに障害をもつ教員の現実的な支援を模索することよりも、障害教員の採用率の増加に合わせられている。

 2008年の新規教員採用試験における障害者枠の募集制度は、2007年の関連法の改定(2009年度より公務員における障害者の法定雇用率6%以上)に基づき、新しい形で実施された。また、2009年から(公務員採用試験令第4条)に基づいて、障害者の受験生の便宜支援を実施している。

 障害をもつ受験者の便宜支援とは、試験を受ける際、外部的な身体障害のため、困難が生じる場合、障害の種類及び、程度によって、必要な便宜を提供するものである。

 こうした便宜を提供される視覚障害の受験生には、全盲、弱視の視覚障害者だけではなく、網膜の異常、緑内障などの疾患者も含まれている。

 視覚障害の類型別便宜提供の概要は次の通りである。
 全盲者……点字による出題及び解答、試験時間1.5倍の延長、点字筆記用具の持参の許可
 弱視者……拡大文字による出題、試験時間1.2倍の延長、拡大読書機などの持参の許可。
 網膜異常・緑内障など……拡大文字による出題、拡大読書機などの持参の許可、試験時間1.2倍の延長(必要と認められた場合)

 このようにして採用された視覚障害教員が教育委員会或いは、学校で勤める時の勤務環境を具体的に調べて見ると、物理的環境の側面からは学校を含めた公共機関には、バリアフリーに配慮した施設設備の拡充が徐々に進められている。2009年からは、障害をもつ公務員が職務遂行の場所まで出入りしやすいように、点字誘導ブロックなどを設置した出入り口や、スロープの設置などが積極的に推進されている。これは、(障害者、高齢者、妊婦などの便宜増進に関する法律)及び、(障害者差別禁止及び権利救済に関する法律)など、関連の法律に基づいて実現している。特に、国・公・私立のそれぞれの学校は、(障害者差別禁止及び権利救済に関する法律)に基づき、障害者に対する正当な便宜提供の適用の対象として規定されるようになった。このことにより、それぞれの学校に便宜施設が設置されるように広報の強化及び、予算の拡充が行われている。また、便宜施設の規定が守られているか、適切に設置されているかなどを、定期的に点検している。

 人的支援の環境整備においては、障害者の公務員の職務遂行に必要な業務補助者の配置実現が積極的に模索されている。そしてそのことにより、現在、一部の市道教育委員会や、一部の学校では、所属の視覚障害教員に対する補助教員または補助者の配置が実現している。しかし、障害をもつ教員のための補助者に対する支援にかかる別途の制度や予算は備わっておらず、教育委員会または学校ごとに自主的に支援しているのが実態である。

 さらに、公文書の処理などの行政的な業務環境の場合、以前の教育行政の業務方式は、紙ベースで行われていたが、最近では、情報化の発達によって、教育分野においても、パソコンが用いられるようになった。

 政府の教育行政電算化作業は、1997年の(学校生活記録部)の電算化を筆頭に2002年の教育行政情報システム(National Education Information System: NEIS)を経て最近では、2006年のNEIS教務業務システムと2011年の次世代NEIS 開発を通じ、継続的に変化してきた。

 このような行政業務の変化の中で普通の教員だけではなく、視覚障害教員もやはり困難の多かった文書化された業務の環境及び、業務の処理過程において、電算化された業務の変化に適用しながら、徐々に円滑な行政業務の処理能力とアクセス法が得られるようになってきている。

 以上です。


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