(特別寄稿)「日韓視覚障害教師の会親善交流大会を振り返って」

全国視覚障害教師の会代表 重田雅敏シゲタマサトシ(葛飾盲)

 視覚障害教師でつくる全国視覚障害教師の会(JVT)の代表団が昨年12月末、韓国を訪問し、韓国視覚障害教師の会(KBTU)と初の親善交流大会を開いた。その様子を紹介するとともに、今後の展望や課題を考えた。

 JVTは1981年に結成され、現在、小中高と大学、視覚特別支援学校の普通科などで働く視覚障害教師100人以上が所属し、教育実践の向上と教育環境の改善を目指して活動している。近年、韓国の視覚障害教師との交流を希望する声が上がり、今回、会員12人を含む17人が訪韓。韓国からはKBTUの会員20人が参加した。交流大会では全体会と分科会があり、両国の視覚障害教師の状況と課題が報告され、熱心な質疑が行われた。

 このうち、全体会では、KBTU会長パク・チュンボン氏(弱視男性)と、JVT事務局長の馬場洋子ババヨウコ氏(神戸市立盲、全盲)がそれぞれの会の活動について紹介した。パク氏によると、KBTUは2009年に結成され、現在の会員は120人。主に二つの活動があり、一つは定期大会や夏の合宿、毎月の行事などの親睦活動。二つ目は働きやすい職場環境や支援制度の充実を求める活動だ。これに対して、日本からはJVTのこれまでの歩みとともに、実践記録集の出版、ホームページやメーリングリストの開設、人権侵害に対する支援活動などが紹介された。

 次いで韓国側から2件、日本側から1件の発表があった。初めは知的障害の特別支援学校の教師、キム・ホンヨップ氏(全盲男性)が「視覚障害教員の現状と勤務環境」について発表。障害者義務雇用制度、採用試験の障害者枠、障害者の受験生への配慮、補助教員配置の法制化などについて、現状を紹介し、障害者義務雇用制度で教員採用は増え続けているが、採用後の支援が追いついていないことを報告した。

 2番目は普通中学校の英語教師、キム・ギョンミン氏(全盲女性)が「私の学校生活について」のテーマで話した。生徒とアイコンタクトが取れぬ状況、思うように視覚的な指導ができない悩み、補助教員と比較されるつらさを率直に語った。また、教科以外の校務分掌を担当させてもらえない肩身の狭さや担任を受け持ちたいという強い意欲についても述べた。

 これに対し、日本からは栃木県宇都宮市の小学校で音楽教師として働く南沢創ミナミサワハジメ氏(全盲)が「支え合い、共に歩む教師生活」と題して発表した。教師生活11年の経験から感じた、働く上で必要な姿勢について言及。現在の学校では、校長に後押しされて、毎月全校の保護者、教職員に向けた通信を発行し、自分の考えや働く様子を知ってもらったり、教員と協力して道徳や特別活動の授業を展開したりという積極的な取り組みを紹介した。

 出会うまでは遠い外国の人であったが、今は同じ思いを共有していることを知り、仲間が倍に増えたようなうれしさを感じる。30年前のJVT発足時には、孤立したわずかな視覚障害教師が「前例がない、一人前にできるのか」との壁に阻まれ、奮闘していた。そんな中でも仲間と出会い、情報を得ることで自信を取り戻し、仕事を続けられた。一方、KBTUは結成後間もなく、障害者義務雇用制度によって急激に増えた仲間が直面する処遇の改善を求めている。年齢構成の若さと弱視の比率の多さに驚かされた。JVTの蓄積に期待する意見も多かった。

 歴史や環境は違うものの、授業への思い、処遇の改善、人間関係の悩みなど課題は共通であり、交流の果たす役割は大きい。若い力で新しい障害者支援制度づくりに力を注ぐKBTU、さまざまな事例を基に合理的配慮など制度運用後の効果に注目するJVT、どちらも大切な取り組みだ。JVTは積み重ねてきた教育実践や相談支援活動などの情報を提供することで貢献していきたい。

 さらに私たちは過去の経験に安住せず、前に進まなければならない。今回の出会いは会の活力となり、社会制度の比較へと意識を広げた。それは経験事例を飛躍的に増やし、支援制度改善への大きな弾みになるだろう。既にKBTUを日本に招く準備を開始した。日韓双方の発展を目指して、交流を続けたい。

(点字毎日、2014年2月16日)


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