点字にこだわる (75) 「日韓の視覚障害教員交流会」

全国視覚障害教師の会と、韓国視覚障害教師の会の2回目の親善交流大会が先月、横浜市で開かれた。両団体とも、会員の多くは勤務する学校で、視覚障害のある教員としては一人奮闘している。交流会では、国境を越えても、仲間と課題を共有し、教師として働く喜びを共感できることを実感できたようだ。点字使用者の発言も目立った。分科会の討議を中心に交流の様子を報告する。(濱井良文)

 ー韓国にも総合的な支援学校ー

 「視覚障害教師の存在意義と展望」をテーマにした分科会には15人が参加。韓国からは、いずれも点字使用の3人の男性が討議に加わった。このうちの一人、キム・チャンス教諭(全盲)は、全体会で韓国の実践例を紹介。分科会では日本側の現状を知ろうと、韓国製の携帯情報端末「ブレイルセンス」で熱心にメモを取っていた。

 韓国の工業都市・蔚山(ウルサン)にある特別支援学校で勤務するキム教諭は、知的障害部門と視覚障害部門が併設された自校の現状を報告。韓国には国内に12の盲学校があるが、生徒数は減少傾向で、新たに設置されるのは難しい状況という。一方で、保護者からは自宅から通える特別支援学校をもっと増やしてほしいとの要望が根強く、人数の多い知的障害部門と視覚障害部門を同じ学校で担う「総合特別支援学校」が増えている。同校では250人の児童・生徒のうち視覚障害部門はわずかに22人。うち視覚だけの単一障害は8人で、残りは重複障害があるという。勉強する校舎は別だが、食堂や体育館、通学バスなどの学校設備は共有しているそうだ。

 キム教諭は、身近な地域で教育サービスを提供できる長所に対し、短所が顕著になっていると問題提起した。その一つは、視覚障害児童・生徒の特性に合った適切な教育を行える専門性を持った教員が不足しており、学校行事などの運営や予算配分などで、人数的に少ない視覚障害児童・生徒の教育的ニーズを満足させるには制限が多いとも指摘。視覚障害部門の保護者は盲学校を別に設置するよう継続的に主張していると報告した。同様の学校が日本にもあり、今後増える可能性もあるため、考えさせられる発表だった。

− 学校で共に働く意味とは? ー

 韓国側のキム・ホニョン事務局長(全盲)もこの分科会に加わり、盛んに質問を投げかけていた。ソウル市内の中学校で英語教師として勤務するキム事務局長は、日本側から実践事例を紹介した宮城教育大の長尾博ナガオヒロシ教授(全盲)の発表に「感動した」と切り出した。

 長尾教授の発表は、両国からの参加者に次のように尋ねた。

 「皆さん、こんなことを言われていませんか。『出張の多い公務分掌は無理ですよね』。『学園祭の準備は手伝ってもらわなくてもよいですよ』」。そして、こう続けた。「このようなことは盲人教師への優しさのようにも聞こえる。おもんぱかっての発言にも聞こえる。でも違う。盲人教師の役割を奪い取っている行為です。『見えない私も一緒に準備します』と具体的な方法を伝えるようにしましょう。それが共に働くということです。見える人と見えない人が一緒に働くとはどういうことなのか。私たちの後輩のために、自分たちの職場の人たちに分かってもらうようにしなければならない。それこそが盲人教師の役割です」

 キム事務局長はこの話を受け、韓国内の視覚障害教員が教科の指導は任されても、担任を務めることや学校内のさまざまな業務から外されており、そのために給与水準が低く抑えられている現状を報告。日本での現状を参加者に詳しく尋ねていた。

−まずありきは、教員としての熱意−

 韓国側から大学教員として参加した、朝鮮(チョソン)大学校特別支援教育科のキム・ヨンイル教授(全盲)は、キム事務局長と日本の教員らのやりとりを聞きながら自らの考えを紹介。「視覚障害者は明らかに不利な条件にはあるが、他の教員と同じようにできるなら同じようにやるべきだし、できないならばあきらめれば良いと思っている。その反対に私たちだけができることがあるはずだ。そういうことをたくさん増やしていきましょう」と呼びかけた。そして「方法は違っていても、教師として学生への愛があれば認めてもらえるはずだ」と力強く語っていた。

(点字毎日、2015年2月8日)


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